日本は山岳地帯が国土の大半を占め、なおかつ降雨量が非常に多いという特徴を持っています。この地理的な要因により、毎年の台風シーズンには全国各地で大規模な土砂災害による被害が出ています。
多くの被害を出す土砂災害の一つに地すべりがあります。地すべりにはいくつかの予兆があると指摘されており、その中に、「段差・はらみ出し」「樹木の傾きや変化」について言及されています。地すべりの発生前には、わずかな地形の変化が発生しこの変化が種々の予兆現象として観測されています。この予兆現象を検出して事前の避難につなげられれば、人的被害を減少させることができそうです。 参考:農林水産省資料「地すべりの前兆現象の種類と観測方法」
すでに多様な災害対策が行われているものの、広大な危険地域すべてを完全にカバーすることは困難なため、十分な対策を打てているとは言えません。今後もすべてのリスクをカバーすることはできないでしょう。 このプロジェクトでは、土砂災害の中でも多くの被害を出している地すべりの予兆を検知してアラートを発する装置を開発しました。
この装置はSpresenseを使用し、可能な限り入手しやすい部材を利用してDIY可能な警報システムを構築構築することを目標としています。山岳部や山すその傾斜地などに居住する方が、自宅の裏山や敷地内に簡易的に設置するという利用方法を想定しています。 既存の技術について調査したところ、同様のコンセプトの商品がすでに存在していることも判りました。しかしながら、どこで発生するか判らない予兆現象の検出を行うためには多数のデバイスを運用する必要があるため、端末価格のさらなる低減は重要な課題と言えます。 このプロジェクトでは、多機能であることよりもシンプルな操作性を、電子、電気の知識が乏しい方でもなるべく簡単に実装できる装置の開発を主眼としました。 筐体にはDaisoで購入できるガーデンライトを利用し、ショップで購入する事のできる部材の組み合わせで主要な機能を実装できます。
・ガーデンライトを利用した筐体により、突き刺すだけの簡単設置 ・加速度センサにより、装置の傾きの変化を検出 ・ガーデンライトのLEDを利用してフラッシュによる警報表示 ・Wi-SUN通信によるアラート信号の送信 ・受信側デバイスからMQTTにて任意の端末へアラート情報を送信 ・警報表示デバイスがアラート情報を受け取り警報表示 ・ガーデンライトの太陽電池パネルによる電源の補完 ・複数デバイスのデータをGoogleスプレッドシートに保存 ・センサデバイスのステータスをスマホアプリ上にマップ付きで表示
装置を設置する際には、監視したい場所に装置を挿して自立させ、電源を入れるだけです。(0:04~) 電源を入れると加速度センサで装置の傾きを測定し初期状態を記憶、Wi-SUN通信で起動完了ステータスを送信します。 システム起動時に警報表示用のLEDが一回フラッシュ、Wi-SUN通信成功後に二回フラッシュ正常起動を確認できます。(0:14~) 起動が完了するとDeepsleepに入ります。
初期設定では、1時間ごとにDeepsleepを解除し傾きを測定します。上記の動画では、動作確認のためDeepsleepは3秒に設定しています。初期の傾きとの差が閾値(初期設定では5°)未満であれば、異常なしのステータスと角度変化の値を送信して再度Deepsleepに入ります。
Deepsleep解除後の装置の傾きと初期の傾きの差が閾値以上であれば、ガーデンライトのLEDがフラッシュし、Wi-SUN通信にてアラートのステータスを送信します。
受信側デバイスにはRaspberry Pi 4Bを用いました。Wi-SUN通信の受信には、Wi-SUN USBドングル BP35C2を使用しています。 MQTTサーバを兼ねており、警報表示デバイスや任意のデバイスに警報データを送信します。
受信側デバイスから警報データを受信すると、異常を検知したセンサー端末のIDを表示、テキスト、背景色、警報音で警報を表示します。(0:45~)
Raspberry Pi で受信した情報は、Googleスプレッドシートに保存されます。 保存された内容は、Glideで制作したスマホアプリで閲覧可能です。スマホアプリにはセンサー端末のリストとそれぞれのステータス、GNSS情報を元に設置位置を地図上に表示します。
センサー部のコントローラーにはSpresenseを使用し、BMI160の加速度センサの値からデバイスの傾きを計算します。 測定結果は、Wi-SUN通信で受信装置(Raspberry Pi)へ送信しています。 受信装置はpythonでWi-SUN通信やデータの処理を行い、Node-REDでMQTTサーバを稼働、ディスプレイ装置に警報情報を送信します。 受信したデータはGoogleスプレッドシートに送信、記録し、Google Apps Scriptで複数センサの最新データの記録、更新おを行います。 センサデバイスのステータスや設置位置はGlideにより作成したスマホアプリで、最新データを確認できます。設置位置も地図上に表示できるため、設置場所の確認やセンサの回収も容易にできます。 警報ディスプレイ装置にはM5Stackを使用し、アラート発生時には音と画面表示で警報を表示します。複数のディスプレイ装置を同時使用できるため、居間のテレビ横、寝室のベッドサイド、子供部屋など 任意の位置に増設できます。